U-18 応援プロジェクト~Winter~

アスリート・パフォーマー 松下 奈緒さん(女優、ピアニスト、作曲家、歌手)

 

「好き」を極める継続力、

他者を受け入れる柔軟性を大切に

 

女優、ピアニスト、作曲家、歌手
松下 奈緒さん

 

 

 ―なぜエンターテイメントは人々を惹きつけるのでしょうか。

 

 松下 生きていく中でエンターテイメントは絶対に必要なもの。コロナ禍を経験し乗り越えた中で「心を豊かにするものは何か」と考えると、笑顔になれたり、一緒に共感できたりするエンターテイメントの、ライブ感そのものに魅力があると感じます。それを自分が表現し伝えていきたいと思っています。


 ―「表現」への醍醐味について。

 

 松下 自分が思う表現を喜んで、楽しんでいただける方がいるからこそ、私も新しい表現を見つけたい、色んなことを発信していきたいと思い、新たな挑戦ができる。お客様がいてくださることが、私のエネルギー源になっています。


 ―新しい挑戦といえば、去年4月から朝日系列・旅番組「朝だ!生です旅サラダ」のメインMC就任など新たな分野を開拓されていますね。

 

 松下 生放送の旅番組でMCをさせていただける。こんなにうれしいことはないと思いながらも、生放送だけに緊張することも未だにあります。私がスタジオでどんなコメントをしても、映像の美しさには勝てません。旅している姿を皆さんがテレビの前で観てくださることが、一番説得力がありますよね。自分に何ができるのか、毎週、録画を確認して研究しています。お芝居とは全く違う神経を使った新しい刺激が、心地良い感覚です。
 旅は、人を自然体にさせる魔法みたいなものだと思います。先日はロケで初めて台湾に行きましたが、思いっきり楽しんでいる私を観て一人でも多くの方に「台湾に行きたい」と感じていただけたらうれしいです。食べ物は本当に美味しかったですが唯一、初めて食べた臭豆腐が苦手でした…。ですが、そういった経験も良い思い出です。それも含めて、難しく伝えようとせず、最初の衝撃やファーストインプレッションが大事だと考えています。その時、初めて見る、初めて聞く、初めて食べるなどといった反応が一番新鮮です。旅に限らず、ドキュメンタリーなど他の番組でもなるべく先の展開は知らないようにしています。決められたセリフではない新しい私の一面を見ていただければうれしいです。また、生放送ならではの予測できないことや掛け合いなどもおもしろいです。決まりがあるようでない世界。人情感や決めるところは決めるというバランスがテレビの中のお仕事でも全く違いますね。


 ―日本テレビ系列・連続ドラマ「CODE―願いの代償―」でのアクションも松下さんの新たな一面でしたね。

 

 松下 私はアクションをしないだろうと思っていた方が多いのではないでしょうか。こういった役をいただくことで、アクションを学んだり、現場でディスカッションをし、役を通して、挑戦や経験する機会の中で、たくさんの気づきを感じることができます。役で自分自身の幅が広がることも多いです。


 ―女優、ピアニスト、作曲家、歌手など何刀流とも思える松下さんですが、継続する原動力は。

 

 松下 好きなことを集め、どれも諦めきれずに続けてきたことです。メロディーを奏でる、歌を歌う、お芝居をするのも全部自分から発せられるもの。好きなことに対して自分という人間がいて、どのような表現方法をするか。言葉に乗せるか、メロディーに乗せるかという違いで、表現には変わりありません。
 最初は音楽からスタートしました。中高生の時に音大に行くためにクラシック音楽を練習するのですが、「モーツァルトはどんな思いでこの曲を書いたか」を考え調べ、曲に込められた思いや時代背景を想像する。そうすると自分の頭の中で色んなストーリーが組み立てられます。役作りも、その延長線上にあります。どの世界にいても、「創造力」と「想像力」は大切だと思います。


 ―それぞれの難しさや松下さんが大切にしていることは。

 

 松下 物理的に時間が足りないと思うことはありますが、必ずスタッフや監督、役者の皆さん、周囲の人に助けられていると感じます。他者の言葉に耳を傾ける、柔軟に物事を考えられる自分を常に置いておかなければと意識しています。自分という人間がありつつも、他の人の助言を取り込める余白や余裕を残しておくことで成長できる。日々、進化し変化していくことが大切です。エンターテイメントは答えのない世界です。同じことを続けるのも一つですが、常に違ったアプローチも考えています。それらをチョイスするのは結局、自分自身と思いながらも、やはりエンターテイメントは皆で作り上げていくものなのだと思います。
 旅サラダでは30周年を迎えた長寿番組のMCという立場で参加させていただき、内心ドキドキしていましたが皆さんが温かく迎え入れてくれたことがうれしかったです。今ではファミリー感のある現場に居心地の良さを感じています。


 ―松下さんの活動はそれぞれがしっかりと形に残っている印象を受けます。

 

 松下 形に残るのはうれしい反面、怖いことでもあります。NHK大河ドラマ『義経』のエンディング「義経紀行」でピアノ演奏をさせていただきましたが、演奏を聞き返すと今だったら当時のような弾き方はしないと思います。お芝居も10年経って振り返ると今はこういう芝居はしないなと思いますが、当時にしか出来なかった音楽やお芝居を思い出して「あの時のあれが好きだった」と言ってもらえるとうれしいです。作品として形に残るというのは反省もするし、今の自分への導きにもなる。そこには、後退はなく必ず前進しかありません。


 ―U―18、読者へのメッセージをお願いします。

 

 松下 コロナ禍など世の中が移り変わる中で、今の10代の皆さんは私が10代の時にはしなかった大変な経験をされたと思います。自分たちで答えを見つけ、葛藤しながらも対応できる強いメンタルを身につけられたのではないでしょうか。
 皆さんには自分と同じくらい他の人のことを思いやる優しい気持ちを大切にしてほしいです。それは大人にならないと気づけない気持ちかもしれませんが、大人になってもずっと持ち続けていける気持ちです。他人を思いやる気持ちを大切に、皆さんが日本を担い、優しい大人になられることを願っています。


 ―最後にこれからの抱負をお願いします。

 

 松下 今年、デビュー20周年を迎えますが、このお仕事をずっと続けていくために、どうすれば自分が楽しく且つ、そのことを皆さんへお伝えできるかを考えています。そのために、一つ一つの作品にその思いを投じ、着実にゆっくりと深化していきたいです。


 ―ありがとうございました。

 

 

【プロフィール】(まつした・なお)/1985年2月8日、生駒市生まれ。兵庫県出身。3歳でピアノを始め、2003年に東京音楽大学に進学。2004年、女優デビュー。多数のドラマ、映画、CMなどに出演する。また、ミュージシャンとしても活動する。2010年、NHK朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」ではヒロインを演じ、同年紅白歌合戦で紅組の司会を務めた。2023年4月から朝日系列・旅番組「朝だ!生です旅サラダ」のMCを担当している。今年5、6月には「松下奈緒20th ANNIVERSARY LIVE」が開催される。

前回の応援プロジェクトはこちら