2026 SUMMER
三浦 大輔さん(元プロ野球選手・監督)
全国高等学校野球選手権奈良大会 開幕特集
挑戦の先に成長がある
元プロ野球選手・監督
三浦 大輔さん
野球を思い切り楽しんでほしい
奈良県橿原市出身で、横浜DeNAベイスターズのエースとして25年間プレーし、2024年には監督としてチームを26年ぶりの日本一へ導いた三浦大輔さん。高田商業高校時代は甲子園出場こそ果たせなかったが、その悔しさを糧にプロ野球界を代表する投手へと成長した。奈良新聞U-18応援プロジェクトの特別企画として、高校野球への思い、青春時代の経験、挑戦を続けることの大切さ、そして奈良県の高校球児へのメッセージを聞いた。
高校野球への想い
■三浦さんにとって高校野球とはどのような存在ですか。
三浦 高校野球は自分にとって青春そのものですね。実際にプレーしていた期間は二年半ほどですが、本当に中身の濃い時間でした。野球の原点と言える場所ですし、高校時代があったからこそプロ野球選手になることができました。良いことも悪いことも含めて、たくさんの経験をした三年間でした。
特に印象に残っているのは、高田商業高校三年生の夏、奈良大会決勝です。あと一歩のところで天理高校に敗れ、甲子園出場は叶いませんでした。しかし、あの試合は自分の持っているものをすべて出し切った試合でもありました。負けた直後はもちろん悔しかったですが、表彰式では不思議と晴れやかな気持ちだったんです。「やり切った」「高校野球が終わった」という充実感がありました。
高校野球とプロ野球はまったく違う魅力があります。プロは仕事として年間百数十試合を戦いますが、高校野球は負けたら終わりのトーナメントです。同じ学校で学び、同じ時間を過ごした仲間たちと一緒に戦う。その年代だからこそ生まれるドラマがあります。だからこそ、多くの人の心を動かすのだと思います。
最近の高校野球を見ていると、選手たちのレベルは本当に上がりました。それでも、この時期になると自分の高校時代を思い出しますし、高校野球が持つ特別な価値は今も変わっていないと感じています。
青春時代の経験
■三浦さんはどのような野球少年でしたか。
三浦 決して目立つ選手ではありませんでした。足も遅かったですし、何か特別に秀でたものがあったわけでもありません。ただ、野球が好きでした。友達と試合をして勝った時の喜びや、グラウンドで仲間と弁当を食べる時間が本当に楽しかったですね。
高校時代には野球を辞めようと思ったこともありました。小学生からずっと野球を続けてきましたから、遊びたい気持ちが強くなった時期があったんです。その気の緩みから練習をサボるようになり、野球から離れかけました。
そんな時、恩師から言われた言葉が今も心に残っています。
「信頼を失うのは一瞬。信頼を得るには時間がかかる」
この言葉はその後の人生そのものになりました。信頼は毎日の積み重ねでしか築けません。一度失えば取り戻すのは大変です。だから裏切らないこと、誠実でいることを心掛けてきました。プロ野球選手になってからも、監督になってからも、その考え方は変わっていません。
もし高校三年生の自分に声を掛けることができるなら、「頑張っていれば必ず良いことがあるぞ」と伝えたいですね。当時は先のことなんて分かりませんでしたが、努力を続けた先にプロ野球選手としての人生が待っていましたから。
挑戦を続けることの大切さ
■挑戦を続ける原動力は何だったのでしょうか。
三浦 一番は野球が好きだからです。好きだから上手くなりたいし、負けたくない。その繰り返しでした。原点をたどれば、野球に出会わせてくれた父親の存在が大きいですね。
自分はドラフト6位でプロ入りしました。決して華やかなスタートではありません。でも、プロになること自体が挑戦だったと思います。当時は「プロになれた」という喜びだけで飛び込みましたが、実際に入ってみると想像以上に厳しい世界でした。それでも挑戦して良かったと思っています。
現役生活では苦しい時期もたくさんありました。思い通りにいかないことの連続です。しかし、失敗しない人はいません。大切なのは失敗した後です。次にどうするのか。その失敗をどう生かすのか。その繰り返しが成長につながるのだと思います。
監督としても同じでした。就任一年目は最下位でしたが、その経験があったからこそ日本一までたどり着くことができました。選手だけではなく、スタッフやファンも含めて同じ方向を向き、一つの目標に向かって進めたことが大きかったと思います。
自分は決してエリートではありません。負け続けてきた人生でした。プロでも勝ち星より負けの方が多いくらいです。それでも野球が好きだから続けられた。目標に向かって一歩ずつ積み重ねてきた結果が、今につながっているのだと思います。
奈良県の高校球児へのメッセージ
■最後に奈良県の高校球児へメッセージをお願いします。
三浦 まずは野球を思い切り楽しんでほしいですね。甲子園を目指すことはもちろん大切です。でも、甲子園に行けるのは一校だけです。
だからこそ結果だけではなく、その過程を大切にしてほしい。仲間と汗を流した時間、苦しい練習を乗り越えた経験、勝った喜びも負けた悔しさも、すべてが将来の財産になります。
特に三年生にとっては最後の夏です。高校野球は人生で一度しかできません。自分たちはプロになっても高校野球をやり直すことはできないんです。だから仲間と一緒に、その瞬間を思い切り楽しんでほしい。
将来プロ野球選手を目指している子どもたちには、まず野球を好きでいてほしいと思います。そして目標を持ち、その目標に向かって一歩ずつ進んでほしい。焦る必要はありません。好きなことを続けることが、一番の力になります。
今年も奈良大会が始まります。勝っても負けても、最後まで全力を尽くしてほしい。そして悔いのない夏を過ごしてもらいたいですね。野球を楽しむこと。その気持ちを忘れずに、思い切りプレーしてほしいと思います。
■ありがとうございました。

